以上、救急科専門医の医師像について私見を交えて述べました。しかし救急医療は救急科専門医だけで成り立つものではありません。救急隊員は病院前救急の大きな担い手です。また病院や各専門診療科のバックアップがなければER型救急も救命救急も治療は完遂しません。救急科専門医は救急医療の中心に存在し、ベストを提供する立場にあります。
昨今、救急医療の危機が報じられています。高齢化社会における医療費抑制、医師数増加の抑制、医療訴訟の増加といった背景のなか、救急科専門医だけでできることは限られています。こうした背景が改善すればその力はさらに発揮されるでしょう。
救急科専門医のスキルアップとして
救急医学会認定施設で修練することが第一です。ここで病院前救急と救命救急を研修します。ER型研修も併せてできる施設がなおいいでしょう。さらに標準化された治療(ICLS、BLS、ACLS、JPTECTM、ITLS、JATECTM)を学び、災害医療(MIMMS、DMATなど)についても研修します。そしてこれらの基礎の上にサブスペシャリティーを獲得するために必要であれば他の診療科で一定期間研修します。
もちろん学会は非常に勉強になるため積極的に参加します。
救急科専門医のサブスペシャリティーとは?
繰り返しますが、救急科専門医のサブスペシャリティーは外科や脳外科といったものではありません。そもそも各専門医の方々に対して失礼な表現です。私の考えるサブスペシャリティーをいくつか挙げます。
病院前救急、災害医療、ER型救急、外傷医学、急性中毒、広範囲熱傷、集中治療
などで、さらに米国では小児救急や災害予防、高気圧環境医療などなど様々なサブスペシャリティーがあります。
救急科専門医の将来性
救急医療がなくなることが無いので、救急科専門医が不要になることは決して無いでしょう。また救急科専門医はGeneralistなので、様々な場面で活動できる医師です。病院の救急部門や集中治療部門で働き続けることはもちろん、救急救命士の養成に関わったり、地域医療を展開したり、と様々な生き方があると思われます。
救急科専門医は諸外国の救急医に比しても多岐にわたる診療を担っています。だから、救急科専門医の英語表記はEmergency Physicianではなく、Acute Care Physicianなのです。
文責 福島英賢
参考文献
小濱啓次.救急医学
2001;25:3-6
島崎修次.救急医学
2001;25:7-11
島崎修次.日救急医会誌
2002;13:1-2
杉本 壽.日救急医会誌
2002;13:477-481
|